悪の存在は人間にとっての必然であり、自然の理として強く運命づけられているのだ。祖母も、父も、その脈々と続く流れの上にいるだけなのだ。
           
   「黄昏の百合の骨」恩田陸  講談社文庫

 むせかえるような百合の香りに包まれた洋館。通称「魔女の家」。転落死した祖母の遺言によってその家に住むようになった理瀬を迎えたのは、美貌の叔母ふたり。上品な雰囲気の姉、梨南子と、妹の梨耶子。ふたりはかつて理瀬が祖母にあてた手紙を盗み読み、その中に書かれた「ジュピター」の存在を探しあてようとしていた。一方、理瀬の友人、朋子は、好きでもない男の子につきまとわれて迷惑していたが、ある日、その男子、田丸が行方不明になるという事件が起こる。毒殺された猫、周囲に広がる不穏な空気。誰が、どんな思惑を持って動いているのか。祖母もまた、殺されたのではないか? 漠然とした不安を抱えながら、理瀬もまた、「ジュピター」の謎を解こうとしていた。
 胸の内にすくう不安や猜疑。可愛らしい顔をした朋子も見た目どおりの女の子というだけではないし、もちろん、理瀬もまた、ただの女子高生ではない。
 「麦の海に沈む果実」続編。独立して読めるとはいっても、この中で語られるいくつかの物語は、読んでいないとわからないままになってしまう(が、解説にもあるように、わからないことを、わからない不安のまま読むというのも、この物語の愉しみ方の一つではあると思う)。
 「三月は深き紅の淵を」「黒と茶の幻想」にも関連あり。ので、これを読む前に「三月」で雰囲気を確認しておくのもよいかもしれない。



オススメ本リストへ