人形だから何も感じないとでも思ったのだろうか、私は。
              
 「そばかすのフィギュア」(「そばかすのフィギュア」所収) 菅浩江  早川書房


 新作アニメ「ダグリアンサーガ」のキャラコンテストで最優秀賞を受賞した靖子、近藤、山下のもとに送られてきたのは、最新のテクノロジーで自在に動き、設定に応じた感情までを持つフィギュアだった。靖子がみずからを投影させて作り上げたそばかすの村娘アーダ。精一杯丁寧に美しく仕上げたフィギュアだったが、やっぱり王子はアーダではなく、山下ががさつに作成し失敗した姫のほうしか見ていなかった。靖子が片想いしているその人と同じように……せつなさを共有する愛らしいアーダと心かよわせる靖子だが、ある日、近藤から思いもかけないことを知らされる。
 菅浩江の初期作品を集めた短編集。といっても星雲賞を受賞した「そばかすのフィギュア」をはじめ、かなりの力作が揃っていて、初期作品だからといって決して見劣りはしない。むしろストレートにSFしている分、アニメなどに親しんでいる世代にはなじみやすいのではないだろうか。
 文庫初収録の「月かげの古謡」や「五人姉妹」などにも通じるクローン問題を扱った「セピアの迷彩」など、せつなくてほろりとしてやさしい、そんな話の一方で、「カトレアの真実」のようなちょっとどぎつい話もあって、バラエティに富んだ作品集。菅浩江ファンもそうでない人にもオススメ。

(三原順「はみだしっ子」ファンにも見逃せない一行が……菅浩江と三原順との意外な関係)




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