国王の子は国王になる。それと同じように、処刑人の子は処刑人になる。
        
  「死刑執行人サンソン:国王ルイ16世の首を刎ねた男」安達正勝  集英社新書

 サンソン家は、六代にわたってパリの死刑執行人を務めた家系である。初代、シャルル・サンソンは、死刑執行人が世襲制であることも、自分の子孫が人々に避けられて生活しなければならないことも理解していた。それでも彼が処刑人になったのは、処刑人の一人娘と恋に落ちたからである。とはいえ、罪の意識に苦しむ彼の姿に耐えられず、妻は一人息子を残して死亡。彼もまた、終世、処刑人であることに苦しみ続けた、という。この本は、そんなサンソン家の四代目、大サンソンとも呼ばれるシャルル‐アンリの生涯を綴ったものである。聡明なシャルル‐アンリは、十五歳で父の跡を継ぐが、処刑人が差別されることには常に憤りを感じていた。処刑は誰かがなさねばならぬことである、憎まれるべきは、処刑人ではなく、罪人を裁いた判事であってもよいのではないか、と。しかし一方で、彼は人々がどうしようもない生理的な嫌悪感を抱くだろうことも理解していたし、処刑において自らが手を下すことに関しても、つらい思いを感じることも多かった。そんな彼にとって、フランス革命は、処刑人の自分もまた市民として平等に扱われるチャンスの到来であり、自由と平和のために、死刑は廃止されるだろうという期待を抱かせるものであった。が、サンソンの願いとは別に、当初「人道的」配慮から作られたギロチンは、それまでの斬首や絞首に比べて、多くの人間を短時間で処刑できることから、あまりにも多くの犠牲者を生むことになった。そしてサンソンは、敬愛してやまぬ国王、ルイ16世の処刑に立ち会うこととなる。
 歴史的事実を描いたものであるが、ちょっとした物語よりも面白い。死刑執行人でありながら死刑廃止論者でもあるサンソンの複雑さが、人間的でたまらなくよいのである。読みながら、ジーン・ウルフ「新しい太陽の書」や、デボラ・キャドベリーの「ルイ十七世の謎と母マリー・アントワネット」を思い出した。一気に読めることと思う。オススメ。




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