「ミッドナイター?」
「ぼくらのことさ。真夜中は、ぼくたちだけの時間。世の中のすべてのものが凍りついているときに、ミッドナイターだけは歩きまわれる」

           「ミッドナイターズ@ 真夜中に生まれし者」 スコット・ウエスターフェルド(金原瑞人・大谷真弓訳)  東京書籍


 シカゴからオクラホマ州のビクスビーという小さな田舎町に引っ越してきたジェシカは、母親の思惑からすべての授業を上級クラスで受講しなければならず、大都会からの転校生ということもあってみんなの注目を集めてくたくた。だが、そんなジェシカに大都会からの転校生だからという理由ではなく、新たに現れた「仲間」として目をとめている数人の生徒たちがいた。その理由を、ジェシカは真夜中に知ることになった――すべてのものが凍りつき、時間さえもが止まってしまったミッドナイト。普通の人間には入ることのできない二十五時間目、選ばれた人間だけが過ごすことの出来る一時間、ブルータイムに。とはいえ、ビクスビー高校では異端者のように扱われているレックス、メリッサ、デスに、自分たちと同じミッドナイターだといわれても素直に納得できないジェシカ。しかもミッドナイターは彼らだけではなかった。闇の生き物ダークリング、スリザーたちもブルータイムには活動するのだ。そして、ダークリングやスリザーたちはどうやらジェシカに対して異様な関心を抱いているようで……――
 訳者の金原瑞人もあとがきで書いているが、高校生を主人公としているせいか、いままでのファンタジーとは一味違う、クールでシャープな作品となっている。雰囲気的には「Tomorrow」に近いものを感じるとでもいえばいいだろうか。高校生の抱える悩みや人間関係、ファッション、そんなものがすべてぎゅっと押し込まれていて、それでいてブルータイムの一時間があやうく美しく描かれている。大きな力を持つマインドキャスターのメリッサが、あまりにも普通すぎるといって敬遠するジェシカは、いったいどのような力を持っているのか……ダークリングやスリザーたちとの闘いはどのような展開を見せるのか。今後が楽しみな作品である。



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