明日は、今日の延長に過ぎないって気楽に考えているかもしれない。
 でも、考えてみて。そうしたことには、なんの根拠もないかもしれないってことを。
 明日、日常を支えていると思っていた土台が突然崩れ去り、慣れ親しんだ常識がぜんぜん通用しなくなる……もしもそうなったら、あなたはどうする?
              
「Tomorrow stage1 明日、戦争が始まったら」 ジョン・マーズデン(菅靖彦監修・二見千尋訳) ポプラ社

 オーストラリアのウィラウィーに住む仲良し高校生七人が、ヘル(地獄)という名の窪地にキャンプに出かけた。明日は建国記念日という日で、本当だったら家の手伝いをして大規模な見本市に参加するところだったが、今回は家族ではなく友だちと過ごす時間を選んだのだ。「わたし」エリーが言い出したキャンプで、高校生らしくのんびりだらだらとした時間を過ごしただけだけど、みんなとても満足していた。けれど、見本市の日に夜空を無灯火で低く飛んでいた飛行機……あれは何かの予兆だったのか。家に戻った七人を待っていたのは、信じられない姿にされた家々だった。
 街じゅうが占拠され、武器を持った兵士たちが闊歩している。両親や兄弟の安否どころか、この状況がどこの国によるもので、いったい何が始まったのかさえ、ピンとこない。だが、わかるのは危険だということ。見つかったら、捕まえられるか、殺されるか……。自分たちにできることはあるのか? ヘルに戻って隠れ住むのか、町の人々を救うのか、それとも、できるだけ抵抗してみるのか。
 昔「若き勇者たち」という映画があって、あれも確か高校生がゲリラ戦を繰り広げるような話だったような記憶があるのだが、この話も高校生が高校生なりに工夫してさまざまに敵に抵抗する。ただ、「Tomorrow」の面白さは彼らの抵抗戦にあるのではなく、人間関係のおもしろさであり、彼らひとりひとりの人物であるとも思う。町中の家に隠れ住んでいたクリスを入れて八人になった彼らだが、そもそも、この八人は仲良しではあるけれど、誰がリーダーというのは決まってはいない。書き手であるエリーは、実際にリーダーシップを発揮できるのだが、ときどき仲間をコントロールしたがる癖が悪い方向にむかってしまう。また、エリーの幼馴染のホーマーもまた、それまでの問題児ぶりが嘘のように、危機に際して底力を発揮し、実際にリーダーとしてもいろいろ動く力がある。と、この二人が仲良くしている分にはいいが、反発しあうと、口もきかないような状況になってしまうのだ。危機的状況で、友だちを理解すること、自分自身を理解すること。そのことの難しさの中で揺れる少年少女の姿がリアルに描かれている。
 全豪ベストセラー作品。息もつかせぬ面白さに長さは苦にならないと思う。全7巻。日本ではまだ刊行途中(2007年9月現在)だが、オススメ。



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