わたしがうまくやろうとすればすべてだめになる。いや、悪いほうに持っていこうとすればうまくいく、と言うべきか。
              「決戦! 太陽系戦域」デイヴィッド・ファインタック(野田昌宏訳) 早河書房

 前作で英雄に祭り上げられたシーフォートは、これまで多くの戦友を喪ってしまったこと、自分の罪が正当に認められず英雄視されていることに傷つき、艦隊任務を断り、宇宙軍を退官しようとするが、それも許されず、国連宇宙軍士官学校校長の任に就くこととなった。側近にはいろいろと感情的な問題もあるトリヴァーのみで、心から信用できる相手がいない。自らの士官学校時代と、そこに至るまでの道のりを思い出しながら生活するシーフォートの懸念は、宇宙で出会った敵、金魚が太陽系に攻めてくることであったが、提案した囀り爆弾は予算の都合で無視されてしまう。士官学校の運営にも、宇宙軍そのものも、政治や金の問題とは無縁ではいられないことを知ったシーフォート。手のかかる見習生や士官候補生たちの訓練に感情的にも巻き込まれ、神経をすり減らす日々が続く。そんなある日、妻である元トランスポップのアニーが行方不明になったという連絡が入り、シーフォートは危険なニューヨークの街に乗り込んでいくことを決意。アニーは無事か。
 太陽系にまで現れた金魚との決戦よりも、感傷から呼び寄せた元の先輩、ジェフリー・ソーンや、あれやこれやと感情的にいざこざのあるエドガー・トリヴァーとのぶつかりあい、思いどおりにならない見習生や士官候補生に癇癪をおこしまくるニック、の姿がかなめであると思われる。士官学校校長なんだ、と己に言い聞かせながら、結局は生徒をひいきしてしまったり(としか思えない)、感傷に流されてばかげたことをしては反省している姿は、1巻目ほどの重みはないものの、自虐ループにはまっている。ついでにいうと、これまで曖昧に語られるのみだった、親友ジェースンとの関係とその死の真相がシーフォートの記憶に鮮やかによみがえるのも見どころか。といって、今回も不幸の連鎖がないわけではなく、最後の最後にとんでもない大量死が発生し、その結果……これまでの1巻目からここまでの話はこういうことだったのか! という思いがけないオチになるのでお見逃しなく。驚愕の「後記」。



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