おいおい、どうなっているのだ。
 今日に限ってどうしてこうもおかしな連中が店内に集結しているのか。佐々岡の一味に、頭の弱そうな若者たち。そのうえ、自殺志願者までがうろついている。
          
  「デパートへ行こう」 真保裕一  講談社

 所持金が143円になってしまったホームレス。このデパートから手切れ金を奪おうとしている従業員。部下にまで軽んじられ、合併までのつなぎだと思われている若社長。家出をくわだてた若いカップル……さまざまな思惑を抱えた者たちが、深夜、誰もいなくなったはずのデパート内で息をひそめて動きまわる。だが、一方でここには、生き字引ともいわれる、このデパートを愛してやまない警備員がいた。深夜のデパート。繰り広げられるドラマは、いったいどのような朝をむかえるのか。
 誰もいない施設――学校、プール、図書館、美術館、博物館、そしてデパート――というのは、昼間の喧噪とのギャップがあるだけに、なんともいえず心騒がせるものだ。ときにはそれは恐怖となり、ときには胸躍らせる冒険になる。この物語でも、登場人物たちが暗い空間を行き来するたびに、どきどきしたり、はらはらしたりと楽しめることうけあい。
 さて、物語は徐々にこのデパート鈴膳の贈賄事件、買収劇に絡んだ複雑な事情を明らかにしていく。つながりなどまったくないと思われていた人々をつなぐ、細い糸。どんな大団円を迎えるのか気になって、どんどん読み進むことができるに違いない。
 それにしたって。
 途中、これが本当に真保裕一? と思ってしまった。雰囲気は浅田次郎(笑)。というわけで、「連鎖」や「ホワイトアウト」のような小説が好きな人より、「プリズンホテル」「オー・マイ・ガァッ!」が好きな人のほうが楽しめるだろう。オススメ。



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