焼けるような痛みが、首から肩にかけてひろがっていった。愛情をいだいている人間――娘を愛している父親にしか、こんな写真は撮れないはずだ。ああ、なんということだろう。
             
「凍りつく骨」 メアリー・W・ウォーカー(矢沢聖子訳) 講談社

 犬の訓練士として女性ひとりで生きてきたキャサリンだが、預かった犬には怪我をさせてしまうし、母親の入院費という思いがけない出費と不況で銀行ローンが返せなくなり、土地も犬も奪われようとしていた。銀行の期限はあと二十二日。どうにもならない状況に追いつめられていたキャサリンのもとに、五歳のときに別れた父親からの手紙が舞いこむ。もしキャサリンが彼を手伝ってくれるのなら、この窮状をなんとかできるかもしれない、というのだ。動物園の飼育係をしている男が、9万ドルもの金を用意できるとでもいうのか? 父親に見捨てられた恨みを抱きながらも、切羽詰って動物園に向かったキャサリンを待っていたのは、虎に噛み殺された無残な父の姿だった。
  死の直前の手紙で、父はいったいキャサリンに何をさせたかったのか。動物園の中にいるだろう犯人はいったい誰なのか。敵も味方もわからぬまま、キャサリンは動物園内部に潜む秘密へと近づいてゆく。
  「正義の味方」と名乗り、動物を使って次々に人を殺していく犯人は誰なのか、という恐ろしさと、キャサリンの周囲の人々が誰も彼もうさんくさい状態で、その四面楚歌の中で苦闘する女性、ってのがこの話のひとつの筋。だがもう一方では、なぜ父と母が離婚したのか、父は娘であるキャサリンのことをどう思っていたのか、という家族の秘密に近づくことも重要なテーマとなっている。恨み続けていた父親が、自分を愛してくれていたことを知ったとき、ひとりで頑張ってきたキャサリンが他人を信頼することをおぼえるという成長物語にもなっているのだ。ただのサスペンスで終わらないところが、この本をオススメする一番の理由である。
 ところで、タイトルの「凍りつく骨」は文庫本裏表紙のあらすじを読んでもらえばわかることなので書いてしまうが、蛇に睨まれた状態を指す。蛇の飼育係を担当させられたキャサリンは、蛇が好きな人なんて信じられない、と愚痴をこぼすが、わたしはどっちかっていうとここに出てくるアイリスみたいに、蛇は好きなほうなので、この本の蛇の出てくるシーンも興味深くて楽しかった。蛇がどうしてもだめっていう人がこの本を読んで楽しめるかどうかは……ちょっとわからない。



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