この気持ちはなんなんだろう。
                
 「吉野北高校図書委員会」山本渚  メディアファクトリー

 徳島県徳島市にある進学校、吉野北高の図書館では、高校1年生から3年生までの図書委員が図書館を支える仕事をしている。とはいえ、実際には、やりたくもないのに選ばれた委員はあまり参加せず、用があってもなくても毎日、図書館に通ってくる面々……が、図書委員会の幹部として働いているのだが。そして、そんな風にして毎日通ってくるメンバーは、学年を問わずみんな仲がよく、価値観もあっていて、和気あいあいと仕事をするいい仲間だ。そして、そんな中、2年生の武市大地と、1年生の上森あゆみが付き合い始めた。そして、2年生の川本かずらは、自分の中にやりきれないさびしさを抱えてしまう。大地のことが好きなわけではない。あゆみのことは、可愛い後輩だと思う。でも、恋愛感情とかを超えて、大地とはいい仲間だったのだ。価値観が似ていて、同じような本を読んでいて、一緒にいるといつも楽しくて。いっそ大地のことが好きなら、あゆみのことが嫌いなら、こんな風には思わないのに……
 田舎の小さな高校の図書委員会を舞台にした青春物語。連作短編集の形をとっていて、かずらだけではなく、1年生のときに不登校ぎみだった藤枝、大地とかずらが何も言わなくてもわかりあっている姿を見て傷つくあゆみ、など、さまざまなメンバーの視点から、高校生活(というより、高校生活での図書館)が描かれている。
 学校を舞台にした恋愛小説はけっこうあるけど、図書館というところはめずらしい(というか、2、3巻とすすむにつれて、恋愛模様はさらに複雑化していくのだが……図書館によく来る人たちに、こんな恋愛のごたごたはムリ、というような気もしないでもない(笑))。図書委員経験者以外にも(たぶん)楽しめる小説だと思う。オススメ。



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