一人一人、順番に殺していかねばならない。丁度、そう、英国のあの、あまりに有名な女流作家が構築したプロットのように――じわじわと一人ずつ。
               
 「十角館の殺人」 綾辻行人  講談社

 半年前、四重殺人の起きた孤島に、大学ミステリ研究会のメンバーが訪れる。孤高の建築家中村青司によって建てられた十角館。建物ばかりではなく、十角のテーブル、十角のカップに囲まれたそこで、彼らは互いにエラリイ、アガサ、カー、ルルウ、など、自分の好きな作家の名前で呼びあいながら、のんびりした休日を過ごそうとしていたが、実は彼らの中には、ひとりの殺人者が紛れ込んでいたのだ。一方、本土では、中村青司の弟、紅次郎が訪問客を迎えていた。島にむかったメンバーと同級生だった江南は、自分のもとに送られたきた不可解な手紙に不審と疑惑を抱き、その謎を解明するために動きまわっていたのだ。送られてきた手紙「お前たちが殺した千織は、私の娘だった」――半年前の四重殺人で、中村青司は死んではいないのではないか? 江南は、友人守須、紅次郎、紅次郎の友人島田の助けを借りて、謎ときにとりかかる。だがそのころ十角館では、ひとり、またひとりと、メンバーが残虐な方法で殺されていた。
 綾辻行人のデビュー作。最後のどんでん返しはもちろんだが、この中村青司という建築家が設計した妙な建物での殺人事件の最初といえる。水車館、迷路館、人形館……この作品が気に入った方は、館シリーズと呼ばれる作品群を、ぜひ。



オススメ本リストへ