「朋輩じゃろ? わしら。相手のためなら腕一本くれてやっても惜しゅうない付き合いを、朋輩いうんじゃ」
「親子よりも深い?」
「時と場合によってはの」
            
 「流星ワゴン」 重松清  講談社文庫

 「僕」、永田一雄三十八歳。妻には離婚届を突き付けられ、引きこもりのひとり息子、広樹からは暴力をふるわれ、会社からはリストラされ……もう死んじゃってもいいかなあ、と思っていたある夜、ちょっと古いワゴンに乗った親子に拾われる。橋本さんと健太くん。そのふたりは、一雄が五年前の朝刊で何気なく見た交通事故の死亡者、本来ならばこの世にいるはずのない親子だった。のんびりした口調で自分の自己を語る橋本さんや、生意気で明るい健太くんに誘われるようにしてワゴン車に乗った一雄は、そこで自分にとってのたいせつな場所に戻る。だが、それが本当にたいせつな場所なのだろうか……? 妻の不倫を発見してしまった日。模試に失敗した息子を励まし損ねた日。過去に戻ったところでやりなおしのきかない一日を繰り返すだけでしかなく、苦痛と哀しみしか感じられない。しかしそこには唯一の違いがあった。なぜか、本来ならば病院で末期がんのために死にかけている父が、一雄と同じ三十八歳の姿で現れているのだ。
 忠雄と一雄、一雄と広樹、橋本さんと健太くん、三組の親子には実はそれぞれに溝があり、確執がある。特に忠雄と一雄は長い間ほとんど口もきかず、ほとんど勘当されたに近い状態である。しかし、三十八歳の姿で、自分のことをチュウさんと呼べ、といって一雄の前に現れた忠雄は、そのことをなかなか信じようとはしない。
「わしはカズのこと、可愛ゆうてしょうがなかったんで?」
「アホ、喧嘩はしても、子どもを嫌いになる親がどこにおるんな」

 自分と同い年の父親には、これまで感じていた圧倒的な強さや恐怖よりも、強がって力の入った肩や、意固地になっている男への共感を感じる。チュウさんと知り合うことで、一雄は父親とやりなおすことができるのだろうか……? とはいえ、このワゴンに乗ったということは、もしかすると自分も父親も、死んでしまったということでは……?
 親子、家族という近い存在であるからこそ、一度こじれてしまうとなかなか仲直りをすることができない。それを乗り越えるためには……三組の親子の姿を通して伝わるメッセージに耳を傾けてみるのもいいかもしれない。




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