「じゅ、重傷ですッ、早く、一刻も早く救急車を――」と≪重傷≫のはずの鵜飼が自己申告した。「それから流平君、ほ、保険証はあるか? なかったら、取ってきてくれ! 三割負担でも十割負担よりはマシだから――デスクの引き出しのどこかにあるはずだ」
        
      「密室に向かって撃て!」東川篤哉 光文社文庫

 関東某県に存在するとかしないとかいわれている烏賊川市。そこで、警察のミスによって、密造拳銃が持ち逃げされてしまう。新たな事件が起こらないことを願う警察だが、名門、十乗寺家の屋敷で次々に発砲事件が発生する。たまたま、十乗寺家の娘さくらの花婿候補の調査を行っていた探偵・鵜飼とその弟子流平は、密室殺人の謎に挑むことになるのだが……――
 烏賊川市シリーズ第2弾(ちなみに第1弾「密室の鍵貸します」は図書館に入っています)。有能なのかとぼけているのかわからない砂川警部と志木刑事、単なる貧乏な探偵なのか、すこぶるつきの名探偵なのか微妙な鵜飼探偵、そしていつのまにやら弟子(?)になってしまった戸村流平。加えて、探偵に事務所の家賃を請求するためにあらわれたビルのオーナー、二宮朱美を加えて、物語はてんやわんやの様相で進んでいく。
 「謎解きはディナーのあとで」「放課後はミステリーとともに」と読み進めていくことで気づいたが、東川篤哉って、『お嬢様』が好きなのかも。今回も、十乗寺さくらという、清楚で可憐、しかしながらとんでもないことを平気でやらかす『お嬢様』が登場。ともあれ、この人の作品は読めば読むほどクセになります……



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