「すてきなともだち……って、もしかして、ぼくのこと?」
「そう。あんたのこと」
           
「ともだちは海のにおい」 工藤直子 理論社

 星がいっぱいでさびしいくらいにしずかな夜。「さびしいくらいしずかだと、コドクがすきなぼくでも、だれかとお茶を飲みたくなる」と思っていたいるかと、「さびしいくらいしずかだと、コドクがすきなぼくでも、だれかとビールを飲みたくなる」と思っていたくじらが出会う。ふたりは最初、きまじめな会話を交わし、(コドクもいいが「いっしょ」もわるくないな)と思っているだけなのだけれど、少しずつ少しずつなかよくなっていって……ついには、おたがいがいないとさびしくてさびしくてたまらないほどの親友になる。とつぜん大親友になるわけはなく、少しずついるかとくじらがおたがいに大切な相手になっていくことがちゃんと伝わってきて読んでいるこちらの胸もだんだんと明るくなってゆく。
『宇宙を泳いだ』のいるかのせりふ、「うちゅうって、さびしかった」を読んで、わたしはなんだか涙がでそうな気持ちになった。最終章『なにもしない一日』のもつやさしい時間もすてきだ。
 詩と掌編から成り立っているのでとても読みやすいと思う。「ともだちは緑のにおい」とともに、ぜひ読んでもらいたい。



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