「今は内地と、そんなに変わらないんじゃないかな。きょう買ってあるのは、ポーク卵と、油みそと、塩と――」
「塩って、具は?」
「具はないよ。ただの塩だけさ」
ひとつも東京にはない……と思う。
                  「となりのウチナーンチュ」 早見裕司  理論社

ある朝、目をさました彩華がいつものように置物の蛙に声をかけたら、蛙が口をきいた。貧乏な父親の勇と二人暮らしで、貧乏なせいで学校にも通っていない彩華だけれど、さすがに蛙の声が聞こえるのはまずいと思って神経科に行くが、よく眠れるようになったけれど蛙の声は相変わらず聞こえ続けた。でも、別に困るようなことはないし、蛙とおしゃべりするのはけっこう楽しかった。蛙と話していて気がついたのだ。明るく元気に過ごしている毎日だけど、本当は自分がさびしかったということに。
一方、リストラされた父親とふたり東京から沖縄に引っ越してきた夏海は、ドラマ『ちゅらさん』で思い描いていた沖縄と現実との違いにがっかりしたり驚いたりするが、それでも隣に住んでいる勇と彩華親子の力強さに励まされ、生霊にまでなって夏海を苦しめる母親からも別れを告げることができる――
ちょっととぼけた感じの神さま(?)と、沖縄と東京の文化ギャップにとまどいながらも友情を深めていくふたりの少女の姿がすがすがしい作品。 冒頭にあげたのは、彩華が夏海にすすめるおにぎりの具(笑)。たしかに東京にはない…と思う。
ドラマなどで描かれる沖縄とはちょっと違う、でもやっぱり不思議な力強さをもった沖縄を描いているように思う。作者いわく「ゆるみ系ホラー」ということなのだが、ホラーというよりはファンタジーでしょう……これをホラーとしちゃうところが沖縄と東京のギャップなのかも!オススメ。




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