今回のことはすべていんちきだ。いんちきはもうこりごり。皇太子さまは靴を使ってお妃を選ぼうとしている。でも、あの靴を履ける女の人はきっとたくさんいる。
            
 「バウンド:纏足」 ドナ・ジョー・ナポリ(金原瑞人・小林みき訳) あかね書房

 七歳のときに母を亡くし、十三歳のときに父も亡くしたシンシンは、継母と継姉のウェイピンと三人で暮らしていた。腕のいい陶工だった父から、絵・詩・書の三芸を学ぶようにいわれ、熱心に学んでいたシンシンだが、父が亡くなってからは「役立たず」といわれ、継母にこきつかわれる日々。しかも、継母はウェイピンに纏足をさせようとしているため、足の痛いウェイピンは動くことさえままならず、働くのはシンシンしかいないのだ。小さい足でないと結婚相手が見つからないというけれど、ウェイピンが痛みに苦しんでいる姿を見て、シンシンは纏足なんてしたくない、と思う。そんなある日、シンシンが連れてきた子タヌキがウェイピンの足の指を食いちぎってしまい……
 昔の中国を舞台にした「シンデレラ」。これは「シンデレラストーリー」という意味ではなく、本当に、シンデレラ。当初、纏足の痛みなどがえんえん書かれていたり、シンシンが継母にいわれるままに旅に出ていったり……という流れで、全然そうは思えないのだが、皇太子さまがお妃選びのためにお祭りにやってくる、なんていうあたりで、あれ? と気づくことはうけあい。
 というわけで、ある意味、安心して読める作品ではある。アメリカ人が中国を舞台にして翻案したシンデレラをぜひお楽しみあれ。




オススメ本リストへ