「それを今君に説明している暇はないし、説明してもすぐには理解できない。とにかく戻るんだ」
                 
   「燃える」(「探偵ガリレオ」所収)東野圭吾 文春文庫

 警視庁捜査一課の草薙が説明のつかない難事件にぶつかったときに赴く場所……それは大学時代の友人で、物理学科の助教授である湯川学の研究室である。突然燃え上がった若者の頭、池から浮かび上がったデスマスク、心臓だけ腐った死体、幽体離脱した少年。事件に関わるそれらの謎を、あくまでも論理的に解釈してくれる湯川の存在はいつしか捜査一課の他の面々にも知られ、何か不可解な事件に遭遇したときには例のガリレオ先生のところへ相談に行ってこい、ということになっていた。そして湯川の冷徹な視線が不可解な謎から真実を暴きだす。
 連作短編集。
 探偵には大きく文系探偵と理系探偵がいるように思う。家族関係やら痴情のもつれやらのどろどろした人間的感情から犯行の動機を解き明かす文系探偵と、その場に残されたかすかな痕跡やら何やらから犯行の方法を解き明かす理系探偵。それぞれに良さがあると思うのだが、理系探偵のほうが頭がよさそうに見えるのは何故でしょう……わたしがまったく理系に弱いからか。草薙刑事が馬鹿にされる姿を読みながら、いやいや、こんなのわからない人のほうが多いだろうよ、あんたの頭がすごすぎだよ、とガリレオ先生に突っ込みを入れながら読んでいるのはわたしだけには限るまい。
 それにしても、ガリレオのイメージは佐野史郎だとか……ぴったり。理系で科学者で犯罪者にもちょっと近い(失礼!)。
 理系ではあるが気軽に読める作品でもある。オススメ。



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