――自殺買い
たし、委細面談。但し善良なる青年のものに限る。
         「自殺を買う話」 橋本五郎 (「探偵趣味」傑作選所収) 光文社文庫


 新聞の案内広告を眺めていた「私」は、そこに友人の「自殺買いたし」という広告を見て驚き、友人、野々村のもとに駆けつける。寒い冬の日、そこで「私」が野々村から聞かされた、悲しい過去の物語とは。
 「幻の探偵雑誌」のアンソロジー第2集。現在では他にもたくさんの探偵雑誌からアンソロジーが編まれていて、古びないおもしろさ、品のよさのようなものが感じられる、オススメのアンソロジーとなっている。特に、この「探偵趣味」はちょっと微笑ましいような不思議な話から、殺人事件、暗号解読、夢野久作「いなか、の、じけん」まで収めてしまっている点で、豪華なものとなっている。トップバッター、横溝正史の「素敵なステッキの話」のユーモアが、いったいどういう心境の変化で「犬神家の一族」のような怪奇性たっぷりのものになってしまうのやら……そんなことを思いながら読むのもおもしろい。
 「自殺を買う話」のラスト一行もいいのだが、「老婆三態」のラスト一行もよい。こういう、最後にピリッとしまる短編のよさが、つくづく感じられる。
 横溝正史、江戸川乱歩らが活躍した同人誌。すごい。
 



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