「人とは違うんでしょ? 人とは違うことができるんでしょ? 何で隠すのよ。わかってるわよ。あんたはそうやって馬鹿にしてるのよ。努力したり、頑張ったりしている人を斜に構えて眺めながら、腹の中でせせら笑ってるのよ。そうでしょ?」
      
                         「ここじゃない場所」本多孝好(「Story Seller」所収) 新潮文庫

 退屈で、あまりにも平凡で普通の高校生活を送っている「私」、郷谷利奈は、高校三年生のある日、クラスメートの秋山隆二がテレポーテーションした一瞬を目撃する。いや、それが本当にテレポーテーションだったかどうかはわからない。だが、確かに、秋山は一瞬消えた。そのことには、間違いない。もう一度、見たい。その思いから秋山に視線を向ける利奈だが、友人たちはそれを秋山に向ける恋の視線だと勘違いする。しかし、それならそれで乙女のパワーを使って秋山に接近するという手もあるではないか。利奈はあらゆる手段を使って、秋山に接近し、もう一度テレポーテーションするところを見ようとするが……――
 伊坂幸太郎、近藤史恵、有川浩、道尾秀介、米澤穂信、本多孝好、佐藤友哉らによる豪華アンソロジー。
「面白いお話、売ります」とあるように、どれも魅力的な話が揃っている。
 この作家ってどんな話を書くんだろう……と、ちょっぴりつまみ食いだけしたい人も、好きな作家の話だけを読みたい人も楽しめる。
 作品としては、ミステリが多い。そもそもミステリ作家が中心だから、意図したものなのかどうかはわからないが(もちろん、ミステリ以外の作品も混じっている。近藤史恵の作品などは長編「サクリファイス」の番外編だし)、どれもオチのある話なので、楽しんで読めることと思う。
 これをきっかけに新しい作家に出会えたと思えたら、この作家たちの他の作品も、ぜひ。




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