「あなたにいくつか質問をしなければなりません。いいですか、キース・ランシング、あなたは未来への鍵を握っているだけではなく、過去への鍵も握っているのです」
           
「スタープレックス」ロバート・J・ソウヤー(内田昌之訳) ハヤカワ文庫

 銀河系全体に広がる、星系から星系への即時移動を可能にした人工ショートカットの広大なネットワークを用い、地球上のふたつの知的種族、人類とイルカは銀河系内のその他の知的種族、ウォルダフード族やイブ族と同盟を結んだ。スタープレックス号は三つの母性すべてからの資金援助を受け、四つの知的種族が協力し、研究と調査を進めている宇宙船である。指揮官は四つの種族が交代で担うが、現在の指揮官、キース・ランシングは自分の中に根強く残るウォルダフード族への嫌悪を持て余し、さらには「中年の危機」を迎え、妻のリサとの関係もぎくしゃくしている。そして彼らは、空気のない宇宙空間で星がまたたくという奇妙な現象に直面していた。
 次々にショートカットを抜け出してくる恒星、だの、しゃべる暗黒物質、百億年後の自分から送られてきたメッセージ…という壮大なスケールの話の合間に、若い女性にひかれてしまう自分を後ろめたく思ったり、妻とぎくしゃくしたり、という非常に小さいことが書かれている。とはいえ、人間同士、夫婦が互いに理解を深めるように、異なった知的種族が互いを理解しあっていくというテーマでも…あるんだろうなあ、とは思う。とはいえ、逆にいえば、あんまりおもしろすぎて、わくわく読み終わってしまうのだが、冷静になって振り返ると、話がでかすぎて誤魔化されているけど、もしやこれって「中年の危機」を乗り越える夫婦の話なのかも!? …ま、それでもいいか、おもしろいから。
 とにかく、スケールはでかいし、ウォルダフード族やイブ族といった種族のユニークな姿や特性が丹念に描かれているのもよい。彼らの行動の奥底に、ちゃんと彼らの文化様式があることが伝わってくるからだ。宇宙船内が彼ら全員が少しずつ我慢して、誰にとっても我慢できる範囲の温度や湿度や重力になっている点にも注目したい。
 ちなみに2000年度「SFが読みたい!」が選ぶベストSF海外篇、第2位。ちなみにこのとき選ばれているベストSFには他に「キリンヤガ」(レズニック)「順列都市」(イーガン)「エンディミオン」(シモンズ)「星ぼしの荒野から」(ティプトリー)「マイノリティ・リポート」(ディック)「リメイク」(ウィリス)などがずらりと並ぶ。これで2位ですよ? ね、すごいと思いません?



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