何が正しくて、何が間違っているのか? そのことで悩んでいたのが、何か遠い昔に思えてしまう。今では、どんな惨いことでも、そうするのが当然だと考えるようになっていた。攻撃したり、破壊したり、人を殺したり……、その正しさを問うなんてことあり得ない。
                 
「Tomorrow stage3 爆破へのカウントダウン」 ジョン・マーズデン (菅靖彦監修・二見千尋訳) ポプラ社

 どうしてこんなことになってしまったのだろう。コリーとケビンは病院に行ったまま行方不明。クリスは無意味だとしかいいようのない事故でなくなってしまった。ヘルに隠れ住む残りのメンバーも、おかしくなる一方だ。激やせしてしまったロビン。ふさぎこんでいるホーマー。ときどき神経性の痙攣を起こすリー。フィだけが大丈夫なように見えるのは、彼女が単なるセレブのお嬢さまではなく、芯のしっかりした子だったからなのだろう。そして「わたし」エリーは……いくら戦争だとはいえ、冷酷に人を殺したリーのことをどこかで認めがたく思っている自分にも気づいている。
 ヘルに隠れ、退屈と恐怖の日々を過ごすだけでは、かえっておかしくなってしまう。行動を開始したエリーたちはウラウィーの町に戻るが、そこで見たのは入植用に変えられようとする町の姿と、兵士たちの監督の下に働かされているケビンの姿だった。なんとしてでもケビンを取り戻したい……! エリーたちの戦いがふたたび始まった。
 今回の見どころは、「コブラー湾の戦い」。敵の最重要拠点となったコブラー湾を奪取すべく、エリーたち高校生が編み出した途方もないゲリラ作戦。結果は派手だが、彼らがどのように迷い、恐怖を感じ、そして自分たちの巻き起こした結果に怖れおののいたか。このシリーズの見どころである、高校生らしさは決して失われていない。
 こんなことやりたくない、自分たちはただの高校生に過ぎないんだ……そう思っていても、そう思いたくても、彼らはすでに戦争の真っただ中に放り込まれてしまっている。大人たちさえ、助けてくれようとはしない。絶望の中戦い続けるエリーたちだが、ついに敵の手に落ちてしまい、かけがえのない友を、また一人、失ってしまう。
 彼女は生きていた。彼女は本物だった。彼女は人間だった。それなのに彼女は消えてしまった。存在することを止めてしまったのだ。
 いままでの誰が亡くなったときよりも、今回の友の死は大きくエリーを傷つけ、また読者の心にも残るものとなっている。これから一体どうなるのか、ますます目が離せない状況である。



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