――子どもが空を飛んでるぞ!
          
 「ピーターと星の守護団」 デイヴ・バリー、リドリー・ピアスン(海後礼子訳)  主婦の友社

 聖ノーバートわんぱく孤児院出身の5人の少年たちは、自分たちがどこに行くのかも告げられないまま、帆船<ネバーランド号>に乗せられてしまった。リーダー格のピーターさえ逃げ出すことができず、飢えに泣く仲間たちのために食料をとってきてやることもできない。だが、ネバーランド号でピーターはモリーという女の子と出会い、また、ベルのような音のする不思議なトランクのことも見つけた。あのトランクにはいったいどんな秘密が隠されているのだろう……? 不思議に思うピーターに、モリーは近づかないよう警告するが、ある日、ピーターは船倉で空飛ぶネズミを発見する……
 ピーター・パン前日譚ということで書かれた一作(続きもあるらしい)。原作「ピーター・パン」に忠実だった「ピーター・パン イン スカーレット」 とは異なり、こちらはかなりの改変が加えられているので、好みは分かれることと思う。無邪気で、ときにその無邪気さが残酷さにもなるピーター像とは異なり、こちらのピーターは孤児院仲間に頼られるだけの知恵と勇気を持ち、ちょっぴり女の子に興味が出てきた……というような年頃と性格に設定されている。
 ともあれ、のちにフック船長となる男や、ティンカー・ベル、人魚たち、フックの片手を食べた時計ワニ……などなどの「ネバーランド前の姿」を知るという点ではおもしろい(もちろん、別の前身の想像もできるわけだが)。もしかすると、夏に出るという続編で、ピーターが頭を打って幼児がえりする……とかいうオチになるかもしれないし、と思いつつ、次も読んでみようと思っているわたしである(微妙なオススメだな……えーと、ピーター・パン原作にこだわらなければ面白い冒険モノです。こだわると、違いが目についてちょっと気になる)。



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