「わたしは自分のやったことの結果でどう判断されようといい」
        
  「処刑の方程式」ヴァル・マクダーミド(森沢麻里訳) 集英社文庫

 1963年冬、閉ざされた辺鄙な村から、13歳のアリスン・カーターが姿を消した。若き警部ジョージ・ベネットは、初めて捜査指揮を任され、さらには妻の妊娠により自分が父親になるという意識からも、アリスンのことが他人事には思えず、全身全霊をかけて捜査に打ち込む。しかし、苗字が三つしかなく、全員が親戚であるかのような閉ざされた村では、村人の口も重く、思うように捜査は進まない。だが、それでも少しずつ見つけ出されてきた証拠によって、ついにベネットはこれを殺人事件と断定、死体なきまま被疑者を連行する。
 物語はそれから35年後、アリスンと同年代の女性、キャサリン・ヒースコートがベネットやその他関係者からのインタビューをもとに作ろうとしている本が第一部、そしてキャサリンが本を書くにいたったきっかけ、そして新たな調査によって判明した新事実が書かれている第二部によって構成されている。物語の妙はここから始まるといって過言ではないのだが、それをいってしまったら激しくネタばれになるのでいえないのがつらいところ。
 大学出の警部、しかもよその土地から来たということで、周囲から軽んじられ、無視されているベネットが、その中でも部下のひとりと信頼関係を築き、アリスン事件に打ち込む第一部は、それだけで読み応えあり。死体なき裁判では功を焦ったあまりに証拠を捏造しているのではないかと疑われ、ぼろぼろに傷つきながらもベネットは信念を曲げることなく突き進んでいく。だからこそ、第二部は短いけれども、重い。
 正直、かなり分厚い本である。が、その長さは苦にならないと思う。
 バリー賞・英国犯罪小説部門第一位。



オススメ本リストへ