「精進を続けるひとに『ここまで』はないんですよ。『ここまで』かどうかは、周りが決めることではなく、自分自身が決めることでしょう」
         
 「心星ひとつ:みをつくし料理帖」高田郁 ハルキ文庫

 「みをつくし料理帖」シリーズ6冊め。
 つる家の料理人として、食べてくれる人が笑顔になるような料理、食べる人のからだのためになる料理を作ろうとし続ける澪だが、一方で、このままつる家にいたら、幼なじみの野江を身請けすることも、かつて澪を育ててくれた天満一兆庵を再建することも難しいと感じている。そんなある日、かつて吉原に天満一兆庵を再建しないかと持ちかけてきた翁屋の楼主伝右衛門がふたたび同じ話を持ち込んでくる。と同時に、つる家を敵視してきた登龍楼までもが、登龍楼を居抜きで買い取らないかと持ちかけてくる。……このままでは自分の才能は小さくまとまってしまうのではないか。大きく伸びるために、そして野江のため、天満一兆庵のために、この話を受けるべきではないか。澪を見守る周囲の人々の声もあり、澪の心は大きく揺れる。そしてさらに、かねてから想いを寄せる人とのあいだに、大きな転機も訪れ、澪は自分の生きる道を深く考えていくことになる。
 シリーズのなかでも最大の「揺れ」。料理人としてどのように生きるのか、ひとりの女性として、人として、どう生きることが自分の、そして周囲の人々のためになるのか。
 澪が悩むのは自分の生き方だけではなく、料理の上でも、今回はさまざまな問題が発生する。困難を乗り越え、澪はこれからどうしていくのか。シリーズを楽しみにしてきた人には見逃せない一冊。そして、これから読もうという人は、ぜひ1巻目の『八朔の雪』からどうぞ。



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