きょうしゅう 【嬌羞】(男性にとってそれがたまらない魅力となる)女性のはじらい。
  
 ただの魅力ではない。もう「たまらない」のである。やはり新明解「実感」国語辞典とするべきである。

                               
「新解さんの謎」 赤瀬川原平  文藝春秋

 たしかに……この本が出版される以前にも「読むものがないときに辞書を見ると面白いよね」とか、「現代用語の基礎知識、あれはけっこうイケる」なんて口にする人がいたわけだから、なんとなくみんな漠然と辞書って面白いと感じていたわけである。が、それをこのように本にしちゃったところが、この人のすごいところ。
 この本は一本の電話から始まり、SM嬢(頭文字である。あやしいお仕事の人ではない)と筆者とが新明解国語辞典の深みにはまっていく様が克明に描かれている。
「ふつう辞書というのはもっと守りの姿勢にあるもんだよね」
「そう思います。ほかからミスを指摘されないように、されないようにで、説明はもっと最小限に切り詰めてます」
「それがふつうだよね。だけどこの辞書はなんといっても明解パワーだから、守りを考えるというより、むしろミスを恐れずに攻め込んでくる。明解にするために攻めている。攻めの辞書だね、これは」
「凄い。攻めの辞書!」
 こんなふたりのやりとりを読んでいるうちに、ああ、そうか、新明解にこれまで漠然と感じていたおもしろさは、「攻めの辞書」ってところだったのか……と、いつのまにか納得させられているこの不思議。
 辞書をひくなんてめんどくさーい、かったるーい、と思わずに、「動物園」「女」「ぬらぬら」「ぼさっと」などを引いてみよう。いつしか……新解さんの深みにはまっている自分を発見する、かもしれない。



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