「賢い生き方なんてものはない。そう思ってる奴は、いずれハネ返りをくう」
               
   「新宿鮫」 大沢在昌  光文社文庫、カッパノベルス

 キャリア組の落ちこぼれとし、二十五歳でなった警部という階級のまま、新宿署防犯課で孤独な戦いを続ける「新宿鮫」と呼ばれる男、鮫島。いま彼が追っているのは、模造拳銃の密造をしている木津という男だった。木津の造ったと思われる銃で、何人もの犠牲者が生まれるが、その犯人もわからない。細い糸を頼りに捜査を続ける鮫島だが、彼を妨害するのは必ずしも外部の人間ばかりではなかった――。
 過去に在籍した署で巻き込まれた不祥事、さらにはキャリア同期から渡された一通の手紙(この手紙の内容はシリーズが回を重ねるごとに、少しずつ「匂って」はくるものの、決して明らかにはならない)が、鮫島を警察内部にとっても危険な男にしている。悪い奴らと決して馴れ合うことなく、ひたすらに悪を追いつめるハードボイルドなやつ。恋人は抜群のプロポーションをした売出し中のロックシンガーで、しかも彼女の歌の作詞は鮫島が手伝ったものもある……って、かっこよすぎ(笑)。
 この第一作以降も新宿を舞台とし、ヤクザや中国マフィアとの闘争が描かれていくのだが、鮫島とその恋人晶との関係の変化など、本筋とは違う部分での読みどころも多い。
 それにしても、実はひさしぶりに読み直しました、「新宿鮫」一巻め。こんなにホモばっかり出てくる話だったっけ? というのがまず最初の印象。そもそも木津にしても鮫島をいたぶって遊んでなけりゃ、ああいうことにはならなかっただろうよ……と思ってしまう(笑)。危険な台詞もいっぱいだし。そういや映画でも色っぽい真田が見所だったかも……(苦笑)
 警察もの、ということでは、横山秀夫のリアルさをとるか、大沢在昌のかっこよさをとるかってことなのかもしれない。双方それぞれによさがあるが、個人的には軍配は大沢に一票。だってなにより勢いがあっておもしろいんだもの。



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