「また今月もぴいくんは退屈してるみたいだから、ぼくがオリジナルのパズルを――」
「いらないよ!」

                 「試験に出るパズル」 高田崇史 講談社ノベルス


 受験に失敗し浪人となった、名前は恥ずかしくていえないけれど、友人の饗庭慎之介からは「八丁堀」(これは住んでいる地名から)、従弟で高校二年生の千葉千波くんからは「ぴいくん」と呼ばれている「ぼく」。浪人生とはいえまだまだ受験は先のこと……と行きつけの喫茶店でたべっているぼくや慎之介と異なり、眉目秀麗、才気煥発な千波くんはぼくには頭の痛くなるようなパズルを出してくる。いつの間にかぼくを挟んで親しくなった慎之介はパズルでもビリヤードでも千波くんに挑戦して撃沈しているが、ぼくにはそんなパズル、解く気さらさらないのに……。
 三人が巻き込まれるささやかな(とはいえないこともあるが)日常ミステリを描いた連作短編集。千波くん出題のパズルについては、挑戦してみてもいいし、後の解答編を見てもいいだろう。パズル好きの千波くんが日常の謎までをも考えすぎてしまうところが、かえって笑いどころだったりする。よくあるパズルものがそのままリアルになっていたり(本当のことをいう子と必ず嘘をつく子と本当のこととうそを交互にいう子……が三つ子で登場したり、漕ぎ手が限定されていてなおかつ一人にできない幼い子や犬がいる状況で川を渡ろうとしたり)するのだが、まあ、頭で考えるのと現実とはいろいろ違っているわけで……(それがどういうことかは読んでのお楽しみ)。
小説よりもなぞなぞやクイズ、いわゆるパズルが好き、という人にもオススメ。そしてもちろん、わたしのように(そして主人公の「ぼく」のように)頭をつかう論理パズルなんて面倒だわ、と思っている人でも楽しめる作品である。



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