「すべての子供たちよ」
「なんだって? 世界じゅうの子供が来るというのか?」
「ええ。こられる子はみんな」
                  
「シルバーチャイルドU 怪物ロアの襲来」 クリフ・マクニッシュ(金原瑞人・中村浩美訳) 理論社

 前作でシルバーチャイルドとなったミロ。四マイルを超える身長とその五倍のサイズの翼で、かつてはゴミ捨て場でしかなかったコールドハーバーを守る、銀色の少年。ミロが現れてからは、宇宙の彼方からやってくる怪物ロアの声は世界じゅうの子供たちに聞こえていた。世界じゅうの子供たちが、地球を守るために、そして守られるためにコールドハーバーを目指してやってくる。だが、その中でも第一世代のミロを生み出すのに一役買った最初の六人、癒しの力ビューティを持つトマス、ビューティを必要とする子どもたちを捜すことが得意な双子、エミリーとヘレン、優しい巨人ウォルター、人間に限らずあらゆる生き物の心が読めるヘレン、そしてミロの幼い妹のジェニーは特別だった。
 ミロがシルバーチャイルドになるためにはビューティが必要なのに、ミロのことを理解できず、ビューティを与え渋った過去を持つトマスは、第二世代の子どもたちを探すためにコールドハーバーじゅうを歩きまわっていた。今度こそ、惜しみなくビューティを与え、ミロを支える偉大なる守り手を生み出すために。だが、トマスが出会った子どもたち、<土掘り屋>は、徐々に不気味な変貌をとげてゆく……
 シルバーチャイルド2巻目。
 今回は、トマス、ヘレン、双子、ウォルター、それぞれがそれぞれの能力、体力、勇気、優しさ、すべてを必要とする試練に立ち向かうことになる。
 ヘレンはロアの心に接触し、ロアがなぜ地球を目指しているのか、ロアの心の中にはなにがあるのか……ということを知る。みなのために情報を得なければならないヘレンだが、怪物の心と一人で向かい合わなければならない恐怖と哀しみは深い。双子のエミリーとヘレンもまた、海の底で眠る<プロテクター>のためにみずからの限界に挑戦し、ウォルターはそんな彼女たちを陸で待つという試練にさらされる。そして、なによりトマス。前作ではミロを信じきることができなかったトマスは、今度は信じた相手に裏切られるという試練に向かい合う。だが、彼らは着実に成長し、ロアに立ち向かう力を身につけている。
 ふつうの子どもたちが勇気を持って立ち上がる力強さ、美しさ。一巻目以上にすばらしい作品。



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