「やりたいことが見つかったら、こわがらずにぶつかってけよ。体当たりでドッカンとさ。やりたいことやるために生まれてきたんだからな、おれたち」    
                  「リズム」 森 絵都   講談社

 中学一年生のさゆきはいとこの真ちゃんが幼いころからずっと好き。幼なじみで弱虫のテツは嫌い。受験勉強でとんがっているお姉ちゃんのことも最近はちょっと苦手。真ちゃんは中学卒業後、高校には行かずにバイトをして暮らしている。髪の毛も金髪、着るものも派手だ。でも、さゆきは真ちゃんの中に変わらないものを感じていて、そして真ちゃんはずっとさゆきの側にいてくれるから、好き。けれどある日、さゆきは大好きだった真ちゃんの家のおばさんとおじさんが離婚するということを耳にする。大切にしてきたものが壊れてしまいそうな予感に怯えるさゆき。そして、真ちゃんもまでもが……
 さゆきの日常はきらきらと輝いている。それはきっと、さゆきが自分の日々を本当に大切に思っているからだ。
「近ごろの中学生はくだらない話ばかりして……とよく大人の人がなげいているけど、あたしたちにとってはこのくだらない瞬間が、宝物みたいに大切なんだ」。
だからこそ、真ちゃんは変化に怯えるさゆきに、「さゆきだけのリズム。それを大切にしてれば、まわりがどんなに変わっても、さゆきはさゆきのままでいられるかもしれない」といってくれたのだろう。
 自分、ってなんだろう。変わらないもの、ってなんだろう。そんなことを考えさせてくれる、きらきらした一冊だ。



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