一、舞台は「紅桃寮」
一、四○四号室が「開かずの間」
一、事件の発生から解決までが「七日間」
   
       「寮の七日間」加藤実秋、谷原秋桜子、野村美月、緑川聖司  ポプラ文庫ピュアフル

 借金とりから逃れるための一家離散で、やむなく不登校を続けていた学校の寮に入る、ことになってしまった「ぼく」木村佑介が美術センスはあるが強引な先輩に巻き込まれてつつ遭遇した幽霊騒動を描く『聖母の掌底突き』。ネットでも有名な美少女都筑ノエルと親しくなるために紅桃寮に入った「わたし」谷村雨音の思いを描く『桃園のいばら姫』。季節外れの入寮生とともに幽霊騒動の謎を解くはめになってしまった佳樹の日々を描く『三月の新入生』。そして良くも悪くも個性豊かな家族と旅行中に事件に遭遇する大樹のぼやきで綴られる『マジカル・ファミリー・ツアー』。
 共通する設定は三つ。舞台は「紅桃寮」、四○四号室が「開かずの間」、事件の発生から解決までが「七日間」。それぞれの作家がこれだけの設定から描き出した作品は、それぞれにおもしろく、どれをとってもハズレなし。それにしたって、加藤実秋にはやられた、という感じ。舞台が紅桃寮となれば、どうしたって学園ものになってしまいがちなところを、家族旅行とは……。
 知っている作家さんもいるだろうし、ここで初めて読む作家さんもいるだろう。これをきっかけに、ほかの作品を読んでみてもいいと思う。
 気軽な感じの本が読みたい人にオススメ。




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