「何をおっしゃる」プレイズワージィが言った。「カリフォルニアに金鉱がひとつしかないわけではないでしょう。あなたがだれよりも早く大金持ちになる可能性はまだのこされているのですよ」
          
「Gold Rush! ぼくと相棒のすてきな冒険」 シド・フライシュマン(金原瑞人・市川由季子訳) ポプラ社

 1849年、アメリカ中がゴールドラッシュ、一攫千金を夢みていた時代に、12歳のジャックは執事のプレイズワージィとともにボストンからカリフォルニアまでの旅に出た。高そうな黒ラシャの上着に山高帽、黒いこうもり傘にしみひとつない白いてぶくろといった姿のプレイズワージィは、若きジェントルマンであるジャックの冒険を見過ごすことができず、忠実なる召使としてやってきたのだ。それもこれも、ひとえにジャックと妹ふたりを引き取ってくれた若くて美しいアラベラおばさまのため。大きな屋敷を維持していくことができず、このままでは無一文になってしまうアラベラおばさまを救おうと、金をみつけにやってきたのだ。
 南アフリカの海峡をぐるっとまわる船旅、荒くれ男たちばかりの西部。ひょんなことから<決闘傷のヒギンズ>の恨みを買ってしまうなど、どきどきはらはらの冒険の中、ジャックの唯一の不満といえば、あまりにもイギリス系執事の伝統を守り続けるプレイズワージィが、自分のことを「ジャックさま」としか呼ばないこと。ふたりは相棒のはずなのに……
 冒険好きの男の子と、イギリス系ばりばりの執事が巻き込まれる冒険譚。何があろうと動じないプレイズワージィの執事ぶりがなんともいえず、よい。そんなプレイズワージィが、山高帽をなくし、上着を破り、傘を失って……少しずつ<執事>から<金鉱掘り>へと変身してゆくさまがまたよいのである。単純にわくわく楽しめるお話。気軽に読めます。 



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