「李歐よ、君は大陸の夢を見よ。ぼくは君についていく夢を見るから」
                        「李歐」 高村薫  講談社文庫

 無気力無関心のかたまりみたいな主人公が(しかし機械だけは大好き)、ふとしたことから李歐という名の殺し屋と知りあって、という話なのだが……。
「機械」として拳銃にひかれる主人公や、彼の生い立ちっていうか、過去が在っての現在の姿、というのはとてもしっかり描かれている。こころの動きそのものはそうないんだけれど、だからこそ、かすかに動いたときの感情のさざなみを描く部分もさすが、なのだが……。
 李歐の力強さも、彼のもつ大陸への夢も、魅力的だし。まあ、李歐ってのはたしかに魅きつけられずにはいられない人物だ。
 そうなんだけど……
 事件はあれこれあるけれど、基本的にこの話は、主人公と李歐が15年の歳月、ありとあらゆる障壁(距離とか歳月そのものとか)に阻まれながらも想い想われる。って、話だ。
 ………。いやでも、これを読んだ知人の男性も「高村薫は男同士の微妙な関係を書かせるとうまい」と誉めていたほどなので、そう気にしなければいいのかもしれない。
 でも「心臓が子宮になる」ほど恋しい、男同士の愛情なんてね……(わたしの別の知人はこれを読んで「女って邪魔だな」と呟いた)。
 ま、一度読んでみてください。


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