「わしは、その秘密が、あの緑釉の香合にある気がしてならぬ。あの香合には、きっとなにか秘め事がある。それを聞きだしてくるがよい」
       
  「利休にたずねよ」 山本兼一  PHP研究所

 天正十九年(1951)二月二十八日。太閤秀吉により死を賜った利休は、見届け役として訪れた蒔田淡路守の願いを退け、助命嘆願することなく腹を切る。ここに至るまで、いったいどのようなことがあったのか。物語は、切腹の前日、十五日前、十六日前、二十四日前……と日を遡っていくことで、秀吉と利休の関係、そして秀吉が所望しつづけた緑釉の香合に秘められた秘密を解き明かしてゆく。
 茶の湯の道を極め、美を追求した男、利休。彼の作る茶室は、侘び、寂といいながら、どこか艶やかさを秘めている。それはいったいなぜなのか?
 緑釉の香合、利休の秘めた想い。見え隠れする高麗の女性の影。あらゆるところに謎が秘められているため、時代小説でありながらも上質なミステリーに仕上がっている。しかも、利休だけでなく、秀吉や家康、宗陳、織部といった登場人物たちの個性もしっかりと描かれていて、それぞれの思惑が絡み合うさまが面白い。
 お茶のことはよく知らないが、とても楽しんで読めた。少しでもかじった人なら、もっともっと楽しめると思う。
 茶室でお茶が飲みたくなった。
 第140回直木賞受賞作。オススメ。



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