「本が何よ! 頭がいいなんて何よ! もっと大切なものがあるのよ……友情とか勇気とか……」
      
「ハリー・ポッターと賢者の石」 J.K.ローリング(松岡佑子訳)静山社

 しょっぱなにいってしまおう……おもしろい! 
 最初のうちこそ、どうなるのかわからなくてちょっとじれったいような気もするかもしれない。ハリー・ポッターはいじわるなおじさんの家に引き取られているただのいじめられっこのようだし……。それが動物園でニシキヘビと話をする(?)あたりからどきどきしてきて、ついに不思議な手紙がハリーあてに何通も何通も送られてくるにいたっては、その謎が知りたくて知りたくてページをめくるのももどかしい。ハリーがついにホグワーツ魔法魔術学校に入学してからはもう、どっぷりと物語の世界にはまっている……そんな、本だ。
 それまで一般人の世界でしいたげられていたハリーが、魔法魔術学校では有名人(その理由は読めばわかる)。みんなに期待され、その期待どおりの大活躍をする、その痛快さ。けれど、この本のおもしろさは言葉まわしのユニークさや「賢者の石」をめぐるあれこれと同時に、ハリーをめぐる個性的な友人たちと、彼らとともに過ごす魔法学校の日々にこそあるのではないだろうか。大家族の中で育ち、持ち物のすべてがお下がりだというロン、勉強好きの優等生で鼻持ちならないしゃべりかたをするハーマイオニー、ぐずでどじなネビル。ハリーを目の敵にしているようなお金持ちで意地悪なマルフォイ。同級生ばかりでなく、上級生、先生方もそれぞれに魅力たっぷりだ。この本は一種の学園小説、ともいえるかもしれない。
 魔法魔術学校の授業に自分まで参加している、そんな気持ちにさせてくれる一冊だ。現実世界を忘れ、いきいきと本の中で遊ばせてくれる。

  ハリー・ポッターを英語で読もう! 「ハリポタ英文のオススメ」にもどうぞ。


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