パレアナの輝く目に見入ったとき、彼はあたかも祝福の手が突然に、頭上におかれたような気がしました。もうこれからは長い一日の仕事も更けた夜の疲れも、パレアナの目の光から新しくつかんだ希望をつぶし去ることはできないでしょう。
                   
「少女パレアナ」 エレナ・ポーター(村岡花子訳) 角川文庫

 ミス・パレー・ハリントンは、自分の姉の娘、両親を失って孤児となったパレアナを「義務」の気持ちから引き取ることにする。与えたのはなんの飾りもじゅうたんもない屋根裏部屋、戸を大きな音をたてて閉めたといっては叱りつけ、裁縫や料理、音楽の日課でパレアナをしつけようとする。
 奉公にきているナンシーさえ憐れむこの仕打ちに、けれどパレアナはつねによろこびを見出し、ミス・パレーに惜しみない愛情をむける。牧師だった父親とはじめた「喜びのゲーム」、どんなことからも喜びを見出す遊びによって、パレアナは天使のような明るさとやすらぎをもち、それを周囲に振りまいていけるのだ。そしてそんなパレアナの心は、いつしか頑ななミス・パレーの心を溶かしただけでなく、町全体に広がり、人々を明るくしてゆく……
 喜びのゲームが教えてくれることは、ひとは心のもちようで前向きにでも後ろ向きにでもなれるということ、愛されることによって愛する気持ちが生まれるので、どんな相手であっても愛しつづければ、いつかはその愛情が伝わることがあるということ、だと思う。
 明るく天使のようなパレアナが、思いもかけない事故に遭ってからのできごとには、それまでどれほどこの「喜びのゲーム」をばかにしていた人であっても感動せずにはいられないのではないだろうか。愛とやさしさと思いやりにあふれたすばらしい本だと思う。



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