「聞くところでは、諸君は全員が落ちこぼれにはみだし者だそうだが」中隊長はいきなりぶちかました。
     
 「銀河おさわがせ中隊」ロバート・アスプリン(齊藤伯好訳)ハヤカワ文庫

 正規軍とは異なり、ただでさえクズの吹き溜まりだといわれている宇宙軍にあって、さらなる落ちこぼれにはみだし者ばかりが集まったオメガ中隊。やることのない辺境惑星でくすぶっていたこの中隊に、銀河最大の兵器会社の御曹司で億万長者ウィラード・フールが中隊長として赴任してきた。もちろんそれはドジを踏んだフールへの罰であったはずなのだが、豊富な財力にものを言わせたフールの快進撃がここから始まる。宿舎改築(もちろんフールの私費)中は、惑星中で一番高くて豪華なホテルを貸し切りにするという贅沢ぶり。制服も銃も何もかも特別装備でぴかぴかだ。おもちゃをもらった子どものようにはしゃぐ中隊員たちだが、フールはさらに彼らひとりひとりの能力を見出し、活用し、ついにはオメガ中隊を正規軍と張り合わせるほどのレベルにまで引き上げてゆく……
 ぶっとびミリタリーSF。なにせこの物語は中隊長の執事(!)ビーカーの記録という形式を取っている。どこへ行くにも忠実な執事を従え、惜しみなく金を使う一方で、稼ぐことも決して忘れていない富豪ぶり。金の使い方が半端じゃないので(実はシリーズを追うごとに激しくなってゆく……カジノを買い取っちゃったり、遊園地を建設しちゃったり)、爽快この上ないのである。個性的な中隊員たちもそれぞれに魅力的。フールと出会うまでは能力を伸ばし切れていなかった者たちがそれぞれの力を伸ばし始めることで、互いの個性をも認めあい、協力しあうように変化していく。読後感がさわやかで気持ちの良い小説。
SFが苦手な人、軍隊モノが苦手の人でも楽しめます。




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