「つまり広告用の冒険かい?」
「そうです。ひとりで、銀河系の中心部までいって、もどってきてほしいのです」
     
「銀河の<核>へ」(「中性子星」所収) ラリイ・ニーブン (小隅黎訳) ハヤカワ

 もしSF小説の中に登場する人物全ての中で、一番好きなキャラクターを五人……と問われたら、いろいろ悩むだろうけれど、ベーオウルフ・シェイファーはたぶん、その中に入るのではないか、と思われる。
 ラリイ・ニーブンの未来史「ノウンスペース・シリーズ」で中後期(とでもいうべきか)の重要な役を担うのが、ベーオウルフ・シェイファー。抜け目がなく、人間味もたっぷりのパイロットであるシェイファーの冒険には、いつだってわくわくさせられる。そもそも、ニーブンの世界そのものがとんでもない。臆病なパペッティア人、凶暴なクジン人、といった異生物たちが多々出てくるが、それぞれが思いがけない姿かたちと(それはぜひ読んでもらいたいのだが)特性を持っている上、のちには人間まで、「ティーラ・ブラウン遺伝子」と呼ばれるとんでもない人々を生み出すまでに進化(?)する。
 ノウンスペース・シリーズを楽しんでもらうためには「中性子星」だけでなく、「太陽系辺境空域」や「プタヴの世界」「地球からの贈り物」「プロテクター」などなどの他、集大成とも呼べる「リングワールド」などを読んでもらえればいいのだが、そんなにたくさんは読めないよ、という人には……ぜひ、この「中性子星」をオススメする。「太陽系辺境空域」とどっちにしようかな、と少し迷ったのだが、ベイが活躍するのが、こちらのほうが多いので(笑)。
 高報酬につられてパペッティア人と関わったばかりに、危険な目にあいつつも、おどろきの冒険をするシェイファーは、どこかうらやましい。ニーブンの作品を読むたびに、いつか会えるかもしれない異星人が、こんな存在だったら面白いだろうなと胸躍らせるのである。それにしても、「広告用の宣伝」で、銀河の核まで。うらやましさを通り越すスケールだとは思いませんか?



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