「俺が寝た後に、皆がものすごく楽しい遊びとか会話をしていたら悔しいじゃないか」
            
     「ねたあとに」長嶋有  朝日新聞出版

 東京からは少し離れた高地にある山小屋。涼を求めてやってきた人々が、おとなの遊びを楽しむ。ケイバ。顔。ムシバム。それはなんでしょう。軍人将棋。既存もの(たとえば麻雀牌とか)を使って別の遊びをこしらえたというものもあれば、思いつきでまったく新しい遊びを考え出して、しかもそれが年経るごとにどんどん稠密化していった、というようなものもある。
 さあ遊ぼう! と呼びかけて始まるような遊びではない。というよりもむしろ、山小屋についた時点から、すべてが遊びなのかもしれない。とりとめもない会話、まったりとした時間の中で、いつしか机の上に紙が広げられて「遊び」が始まっていたりする。おとななので、遠く離れていてもメールで参加しちゃったりも。
 妙なリアル感をもつ山小屋(おしゃれなログハウスなんかじゃなく、イメージとしては半分傾きかけたような……開かなくなってしまった入口があったり、虫がどんどん入ってきて、ほとんど虫と同居状態になってしまっていたり、湿気がすごくて布団が冷たかったり……)の中で、日常から離れようとしながらも、結局、仕事のことを気にしてしまっていたり、初対面だけどすんなり仲良くなれる「おとな」が、なぜかそこだけは浮世離れして楽しむ「遊び」。
 こんな遊びをしてみたいし、こんな夜を過ごしてみたい。きっと、自分が寝た後にもこの遊びが続くんだと思ったら、毎日、毎晩、寝不足だ。




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