ひょっとしてお嬢様は、わたくしがお嬢様の話を聞くなり、また例のごとくに『アホ』だの『節穴』だの『レベルが低い』だの『引っこんでろ』だのと、いいたい放題の無礼な発言をするのではないかと、そう案じていらっしゃるのでございますか」
           「謎解きはディナーのあとで 2」東川篤哉 小学館

 これだけいいたい放題すでに連発しておきながら、今回の執事は前回までとはちょっと違う。だって、
「もはや、お嬢様が沖を悪くするようなことは、いっさい申しません」
 なんて確約してしまっているのだから。
 とはいえ、彼の思うところの罵詈雑言と、受けとめる側の感覚とはちょっと違う……わけで、大富豪の令嬢刑事麗子は、今回も相変わらず、執事である影山にばかにされっぱなしである。
 雪の密室をはじめとした密室アリバイものが多数含まれているこの作品は、「本格ミステリ」といっていいのだろうが……まあ、そんなことは気にせず、お嬢様のダメっぷりと、さらにダメなお嬢様の上司、風祭警部の軽薄ぶり、毒舌ではあるが冴えている執事……の三者の関係を楽しんでもらいたい。
 今回はラストに衝撃的な(?)展開あり。いやはや、これはいったいこの先どうなってしまうのでしょうね。
 深く考えず、ただただ楽しみましょう。

 ちなみに「謎解きはディナーのあとで」は2011年年間売上ナンバー1、「2」はナンバー10……すごい。