「わが子よ。前に一度話してきかせたことはなかったか。だれにせよ、もしこうだったら、どうなったろうとは、いってもらえないのだ」
  
  「ナルニア国ものがたり」 C・S・ルイス(瀬田貞二訳)
                              岩波少年文庫


 ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィのペベンシーきょうだいがある日衣装だんすをあけると、そこは雪のつもる別世界だった……。四人きょうだいの不思議な冒険からはじまった物語は、全七巻。もちろんつづけて読むにこしたことはないけれど、一巻ずつそれぞれ独立した話としても楽しめるだろう。偉大なライオン、アスランをはじめ、王子カスピアン、いとこのユースチスなど、四人きょうだい以外の登場人物たちも魅力的だ。
 わたしは実はカスピアンが好きで、ユースチスのことも気にいっているので、「朝びらき丸東の海へ」が一番のお気に入りだ。ナルニアの登場人物たちはひとくせもふたくせもあるのだが、その中でもユースチスはきわめつけだと思われる。そこが魅力的でいい、といったら「え?」と驚かれたこともあるのだが……さて、これを読んだみなさんの感想は、いかがだろう。
 思い入れが強すぎてあまり上手なおすすめ文が書けないが、とにかく絶対の自信を持ってすすめることのできるシリーズだ。
 ナルニアに行くことのできる権利、アスランを見ることのできる力が、年上のピーターやスーザンから奪われていく、そのことの哀しさ。そして、「最後の戦い」でむかえた意外で感動的な結末。何度も何度も読んで、そのたびに新しい発見のある本だ。



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