大人っていうのは、どういうことだね?
            「森の少年」マイケル・ドリス (佐々木光陽訳) 新潮文庫

 「朝の少女」が開拓者たちがやってくる以前の話だとしたら、これは開拓者がやってきてしまった後の話、感謝祭のお話だ。現在のアメリカ人たちは「感謝祭(サンクスギビングデー)」を、ネイティブアメリカンたちがいかに訪れたものたちを歓迎してくれたか、そういう話として残している。だが、ほんとうに迎える側はこころから喜んで歓迎していたのか? これは、そんなことを考えさせる話でもある。
 主人公のモスはせっかくの収穫祭の日に見知らぬお客が訪ねてくるのが嫌で、森の中に入っていく。大人になるための「森の時間」を過ごすために。
 自分って、どういうやつだろう。大人って、どういうことだろう。モスは森の中、ヤマアラシとの対話の中でいままで考えもしなかった自分自身を見つめなおす。そして……彼は大人になれたのだろうか、それとも?
 あっさりとした読み口、昔語りのおもしろさ。けれど、それ以上にわたしが興味深く思ったのは、実はあとがきにあるマイケル・ドリスについて。養子、実子への性的虐待疑惑と、逮捕直前の自殺。作品とのギャップというべきなのか、それとも作品の中には己の無実を伝えたいという切実な気持ちもあったのか。はたして彼は、どういう人間だったのだろう。


 (うわ、信じられない、「朝の少女」の紹介文がまだなかったなんて……! 近日アップします)


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