わたしが決めるんだ。
 でも、どうやって決めろっていうの? パパとママがいないのに、生きていくなんてできるわけがない。でも、テディをひとりで置いていける? アダムは? こんなの無理。
        
   「ミアの選択」ゲイル・フォアマン(三辺律子訳) 小学館

 元パンクロッカーで物わかりのよい両親と、年の離れた可愛い弟との四人家族の長女として育ったミア。ロック好きの両親や両親の友人たちとは異なり、ただひとりクラシックを好み、チェロ奏者になるためにジュリアード音楽院を受験したばかり。そんなしあわせいっぱいのある雪の日の朝。家族全員で出かけたドライブで、助手席側にトラックが突っ込んできた。そして、ぜんぜん違うところから、両親の死や、意識を失った自分を眺めていることに気づいたミアは、これがどんな状態なのかわからないままに、自分を救おうとしている救急隊員たちや、緊急手術の後に駆け付けた祖父母や親友、恋人など、いろいろな人たちの言葉や行動を見守ることになる。そして同時に脳裏をよぎるのは、とてもしあわせだった日々のこと。
 物語は、意識不明の重体になっている自分と、その自分を取り巻く周囲の様子を見守るミア、そして過去の出来事とが交互に織りなされて進行する。音楽一筋で、きっと彼氏ができるのは大学に入ってから、と思っていた地味めでまじめな少女が、人気バンドのリードボーカルのアダムと付き合うようになったいきさつ。お互いあまりにも似すぎていて反発し合っていたキムと大親友になるまでのできごと。そしてそんなキムとしたさまざまないたずらや会話。大好きな両親の教えてくれたこと、パパとママの出会いや、自分が生まれたときのこと、弟のテディのこと。特に家族との思い出がせつないのは、それがもう二度と手に入らないものだから。思い出をたどりながら、ミアは知る。家族とのしあわせが二度と手に入らないのなら、死んだほうがましなのかもしれない。それとも、たったひとりになっても生き続けるべき? そしてミアの下した選択とは……
 せつなく美しい物語。英語でも読んでみたいなと思う。



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