「では、問題その二だ。タイムマシンもタイムトリップも使わず、過去を変える方法とは何か」
「そんなこと、できるの?」
「できるよ」
              
    「まいなす」太田忠司  理論社

 飛魚中学に通う那須舞は自分の名前が大嫌いだった。英語読みするとマイ・ナス……マイナス思考、マイナス評価。悪いイメージを持つその名前から逃れるように、いつも明るく元気に振る舞っていることに疲れてしまっていたからだ。けれど、そんな舞の悩みは誰も知らない。
 ある日、舞はそれほど仲がいいわけでもないクラスメート、津坂茅香に強引に頼まれて、一緒に乳母山の時渡りの祠まで出かけることになってしまう。時渡りの祠は、穴を抜けることで時間を超えることができるといわれている場所だった。茅香ははっきりしたことはいわないが、舞自身にも、もう一度過去に戻れるならやり直したい……その思いがあって、断りきれなかったのだ。しかし、山登りにミュールで来てしまうような非常識のかたまり少女の茅香と一緒で後悔していた舞は、時渡りの祠近くに倒れている少年を発見。同じ中学でバスケ部のエース立岡は、その後、時渡りの祠を抜けて未来を見てきたのだと言って、大きな二つの予言をする。事実なのか、それとも……? 恐怖に怯える生徒たちと、続く事件。そんなとき、舞は伯父の与市からある宿題を与えられる――
 まじめでがんばり屋の女の子が出会った謎。ひとつひとつのことに真剣に取り組む舞の姿がよい。といっても、茅香といい、舞の友人茜音といい舞の母親といい……舞以外の人間がほとんど非常識のかたまりなのはどういうことだろう。ふつうの人である与市や舞の父親が出てくるとほっとしてしまった(笑)。



オススメ本リストへ