みんな、ぼくのくすりのせいだ、とジョージは思った。すばらしいくすりだ。まったく魔法みたいじゃないか。さあ、グランマは、このつぎはどうなるのだろうか?
           
「ぼくのつくった魔法のくすり」ロアルド・ダール(宮下嶺夫訳) 評論社

 土曜日の朝、ママは買い物に行ってしまい、ジョージはグランマとふたりきりになってしまった。グランマは自分勝手で、ふきげんなばあさんで、ジョージにわがままな命令ばかりをいうとってもいやな年寄りだ。その日もいじわるなことをいわれ、泣きたいほどいやな気分になったジョージは、いいことを思いついた。11時のグランマのくすりの時間に、まったく新しいくすりをつくって、グランマに飲ませてやるのだ。
 大きなシチュー鍋のなかに、シャンプー、歯みがき、ひげそりクリーム、美顔クリーム、マニキュア、脱毛剤……どんどんどんどん何でも放り込んでいく。床みがき用ワックス、犬のノミとり粉、カナリアのえさ、チリ・ソース、黒こしょう、家畜用のくすりにエンジン・オイルや不凍液を放り込み、それをぐらぐら煮立てて、さあできあがり。そしてグランマにそのくすりを飲ませてみると……
 全体にはかなりブラックな話ではあるのだが、男の子がわくわく「くすり」を作っていくシーンのおもしろさや、おばあさんがとんでもない変化をとげてしまうところ、それに対するジョージの両親の反応……あたりが見もの。この子にしてこの父あり、というか、このお父さん、かなりぶっとんでいてとんでもない。「男の子」だけならユーモア小説で終わったところを、かなりブラックにしたのは「大人の男」がかかわってきたからだ……ともいえる。とりあえず、このブラックなラストシーンまで読んでの感想はぜひ聞いてみたいもの。
 やっぱりとんでもないよね、このお父さん?



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