「馬鹿げている。科学は人間の知恵だ」
「いいえ。神話こそ人間の知恵よ。科学はまだ神話のすべてを説明しきれていないもの。だから科学者がいるのよ。神話の語り部は当時の最先端の科学者だったのよ」
              
     「レキオス」 池上永一 角川書店

 西暦2000年、沖縄。天久開放地に忽然と現れた巨大魔方陣を眺めていた女子高生デニスは、宙に浮かぶ逆さまになった鼻のない女と目を合わせてしまった。真嘉比のチルーと名乗るその女に憑依されてしまったデニスは、女ともに三世相の友庵を探すはめになってしまうが、一方、そのころ沖縄には伝説の「レキオス」をめぐり、複数の組織が動いていた。「レキオス」とはいったい何か? すべての封印が解かれたとき、世界は、そして人々はどうなってしまうのか……
 謎は、デカイ。話のスケールも何もかもが大きい。しかし(なのか、「だから」なのかは微妙だが……)登場人物たちのほうがもっとぶっ飛んでいて、ついついキャラクター小説のように読んでしまいそうになる。そもそも主人公デニスは驚異的な視力8.0を誇るスナイパー女子高生、チルーのせいなのか聞得大君のオモロが聞こえるようになる……などたしかにスゴイ。スゴイが、周囲の人間のほうがもっとぶっ飛びなのでフツウに感じられてしまう始末。適当なタロットで抜群の的中率を誇るユタのオバァ、知性のかけらもないアメ女から有機ロボットに変身(?)させられてしまう女子高生(「ろみひー」にはいくらなんでも愕然としましたよ……)、米軍将校でありながら謎めいた組織にかかわる男などなど……の中でも群を抜いているのはやはりサマンサ・オルレンショー博士。ノーベル賞級の頭脳をもつ変態――というだけでは語りつくせない奥深さをもつこの女性。サマンサを知るためだけでもこの本を読む価値あり(おおっとそんなに失礼なこと書いていいのか!?)。
 息もつかせぬ展開、その中で縦横無尽に駆け巡る登場人物たち。オススメ。



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