これはぼくたちの宣言だ。
 ぼくらはたえまなく変化し、生きつづける。
 そして、いきているかぎり、はてしなく成長しつづける。
    
   「僕は昆虫採集が好きじゃない」(「恐怖のカタチ」所収)大原まり子 ソノラマ文庫

 結婚までをも考えていた恋人、ナオミに別の男がいると知ってしまった僕。しかも、年上で地位も身分もある相手。それだけでもショックだったというのに、さらには大富豪の女性まで現れてしまう。ナオミが本当に愛しているのは誰なのか、それとも誰のことも愛してはいないのか? そんなある日――
 ホラー短編集。といっても、ホラーだけではなく、ちょっと奇妙な話というものも収められている。
 一応ホラーとうたっているので、血まみれのおじいさんとか、常識では理解できない寄り合いに出席させられた男の話とかの話もある。しかし、「僕は昆虫採集が好きじゃない」は、ホラーというよりは、奇妙なリアル、というものをくっきりと描いたもののように思う。自分が信じていた現実というものが「本当」じゃなかったことを知る瞬間。そんなことって、現実にはあるものだと思うから。
 大原まり子という作家にしては、このホラー短編集はちょっと変わった部類に入るだろう。しかし、収められている「シンデレラ・ハルマゲドン」などは、大原まり子パワー全開。ラスト5行くらいは、絶品である。これまたホラーではないので(気づいたら、ホラー短編集とうたっている割にはホラーじゃないものも多いな)、怖いのが苦手な人は、これだけでもぜひ。特に女性は、「あー、わかるわかるこれ!」って絶対、膝を打ってしまうと思う。



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