濡れ縁に腰かけ、暗い空を見上げる。神去村に来るまでは、よそもの扱いがこんなにつらいなんて知らなかった。
             
  「神去なあなあ日常」 三浦しをん  徳間書店

 高校を卒業したら、適当にフリーターで食っていこうと考えていた「俺」、平野勇気が、担任と母親の陰謀で勝手に放り込まれたのは、携帯さえ通じない山奥、神去村だった。自分の意志とはまったく関係なく、林業に就くことになった勇気だが、仕事はきついし、面倒を見てくれるはずのヨキは教えることには全然むいてないし、こんな過疎の村なのに妙に美人率は高いけどみんな年上の人妻だし……何度か脱走を試みては連れ戻され、それでも次第に山の仕事が好きになっていったのは、たぶん、自然の美しさがあまりにも強烈だったからだ。そもそも神去村に放り込まれるきっかけとなった『俺詩集』でもわかるとおり、感じやすく繊細な部分をもつ勇気の心をふるわせる花や星や山の姿。季節の移り変わりとともに姿を変える山と、そこに生きる人々が、いつしかしっくりとなじんでくる。
 口には出さないまでも、都会で生まれ育った者の目からは信じられない村人の行動に思わずツッコミをいれる勇気が、なんともゆるくて良い。イマドキの少年でありながら、いつのまにか村人たちやら山の仕事やらになじんでいるが、その様子も、別に無理をしているようでもなく、「なあなあ」な感じだ。
 よくよく考えると、とりたてて波乱万丈なわけでもないし、ものすごく青春しているわけでもない。でも、おもしろい。帯で宮崎駿が何度か読んだ、というようなことを書いているが、実際、わたしも何度か読み返してしまった。このおもしろさ、読んだ人にしかわからない。オススメ。




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