あたしは反逆者になりたい。「平和こそ我が使命」と信じて働いている職場のみんなが力を尽くして作っているものをこっそり壊したい。
           
   「カデナ」池澤夏樹  新潮社

 沖縄カデナ基地で、米軍准将の秘書をしているフリーダ・ジェインは、ある日、B-52のパイロット、パトリック・ビーハン大尉と出会った。パイロットは女性をよりどりみどりのように思っている者も多いが、パトリックはどちらかというと疲れきって気のないそぶりをしていることが多く、フリーダはついつい、そんな彼の誘いに乗ってしまう。だが、一方で、フリーダはフィリピンに暮らす母親からの要請で、カデナ基地からの北爆情報をベトナムに流す「スパイ」となる。その情報が、恋人であるパトリックを裏切ることであると知りながら。そんなフリーダとともに「スパイ」活動をしているのは、サイパンで両親と兄を喪い、沖縄でひとり生きてきた嘉手苅朝栄と、朝栄のサイパン時代の旧友、ベトナム人の安南。朝栄夫妻に育てられ、いまはロック・バンドの一員であるタカ。物語は、フリーダ・ジェイン、朝栄、タカ、それぞれの視点から描かれる。
 たった4人とはいえ、准将の秘書であるフリーダ・ジェインから流れる情報は貴重なもので、確かなスパイ組織ではあるのだけれど、物語はどちらかというと、フリーダとパトリックの恋愛模様や、スパイ活動とは別にタカが行っている脱走兵の手助けなど、別の部分も大きい。日常の中に抵抗活動が溶け込んでいるのだ。
 フリーダ・ジェインたちにもっとも邪魔される立場であるB-52乗りのパトリック。実は、戦争をもっとも体感しているのは彼かもしれない。物語は最後、思いもかけない展開をみせる。
 重い題材を扱いながら、語り口調は軽く読みやすい。




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