「世界は天帝がおつくりになったのではないのですか。ならばなぜ、天帝は載のような国をお作りになったのです。あれほど無慈悲な冬のある――私が天帝なら、せめて気候だけでも恵まれた国を作ります。冬に凍ることも夏に乾くこともない、そういう世界を」
                       
    「黄昏の岸、暁の天」小野不由美  講談社

泰麒によって選ばれた載国の王、驍宗。先王の時代にあっては禁軍の左軍将軍を務め、信望も厚く、民からも慕われていた泰王はしかし、乱の鎮圧のために出かけた先で消息を絶ち、泰麒もまた、麒麟の角を傷つけられ、そのまま蓬莱国へと流れてしまった。王も麒麟も死んではいないが国にもいない。この状況では国は荒れる一方、民には苦しみしかない――将軍李斎は命をかけて慶国へ逃れ、景王陽子に載国を救ってくれるように頼む。だがそれは下手をすれば慶国をも倒しかねない依頼だった。自分たちに何ができるのか。そしてまずは幼くして姿を消した泰麒を探すため、延麒、景麒だけではなく、十二国の王や麒麟たちが集まりはじめた……。
「風の海 迷宮の岸」の続編、しかも時代的には前作からわずか数カ月後のことである。あんなにも順風満帆に見えていた載国で、まさかこのようなことが起きようとは。
今回、特に注目すべきは「天帝」「天の条理」の存在かもしれない。十二国の(といってもすべてではないが)王や麒麟が力を合わせるにあたっては、それが本当にしてもいいことなのか、駄目なのことなのかを天に確認する必要が生じる。たとえ道理としては正しくても、それが条理に合っていなければ、下手をすれば命を失いかねないからである。そんなばかなと思うくらいに融通が利かない。あまりのシステマティックぶりに、実は天帝というのはコンピュータプログラムか何かなんじゃないのかと思ってしまいそうである。
ともあれ、泰麒は無事に見つかるのか。そして見つかったところで……もとのままの麒麟として生きることができるのか。そもそも泰王はどこにいるのか。まだまだ先が楽しみであるが、ちなみにこのとき行方不明になっていた泰麒を描いたものが「魔性の子」となっている。




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