だが、それでも、と麻井は考える。あの二人は特別だったと。
               
  「ジウT:警視庁特殊犯罪捜査係」誉田哲也 中公文庫

 警視庁捜査一課特殊犯捜査係に勤務するふたりの女性、門倉美咲と伊崎基子。かたや「泣き」の演技がカンヌ級、といわれるほどに、泣き落しで犯人を説得し、犯人の気持ちに寄り添うことで相手を救おうとする優しい心の持ち主。かたや、男性顔負けの攻撃力を備え、ときには殺意さえむき出しにする強靭な精神の持ち主。住宅地で発生した人質籠城事件の結果として、ふたりはそれぞれ別の部署へと飛ばされるが、そこで門倉美咲は、未解決の児童誘拐事件と、自分が関わった人質籠城事件とのあいだに関連性があることを知る。それぞれの事件を結ぶ少年、「ジウ」の正体は……?
 「武士道シックスティーン」では、対照的なふたりの少女の友情が描かれていたが、「ジウ」における門倉・伊崎のあいだには友情なんてかけらもない。門倉美咲のほうに伊崎基子に対する友情めいたものがあったとしても、伊崎のほうでは、そんな甘ったるい関係は全否定してしまっているからだ。交互に描かれるふたりの生活も、伊崎基子に関しては訓練や捜査といった殺伐としたものが多く、児童誘拐事件を少しずつ解きほぐしていくのは門倉美咲のほうだけである。
 さて、この「ジウ」、3巻でひとつの物語となっている。1巻ずつ読める話でもなく、ストーリーは全部つながっている……ということで。
 長い話が苦手な人、グロいバイオレンスが苦手な人にはオススメしない。警察用語もバリバリ出てくるし登場人物もかなりの人数になるので、小説を読みなれない人にとっては苦痛かもしれない。
 というように考えてみると、よくドラマ化したよなあ、この話……




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