なるほどそうですか、と言おうとして。
 私の目の前が急に闇に閉ざされたのである。
            
   「怪談実話系 3」 『幽』編集部編  メディアファクトリー

 怪談を書いたり編集したりすることを仕事とする人たちが集って旅行に出かけたある夜。深夜の大浴場にむかう途中で、なんとそのうち一人が「何か」に「憑かれてしまった」……! ということで、実話「系」の怪談を収集してきたこのアンソロジー、第3弾に至っては、憑かれてしまった当事者、その周囲にいてあまりのことに驚きおののいた人、とりあえずの手段を講じた人(逆にいえば、それだけの技を持っていた人)……が、それぞれの立場から同じ事件を書く、というとんでもない仕上がりとなっている。これがもし大がかりな仕掛けなのだとしてもよくできているし、実話なのだとしたら、憑かれやすい人もやっかいだが、「見え」てしまう人も厄介。そして、べつになにも見えるわけではないのに、周囲に見える人がいるという人の立場なんてものも厄介だなあ、と思うのである。
 「実際にあった怖い話」ではなく「実話系」となっているあたりがポイントなのだと思う。実際にありそうな話もあるし、よくある話だと思っていたけど、よくよく考えるとこれも怖い話なんだなあと実感できるような話もある。
 ともあれ。
 短い話なので、怖い話が好きな人はたくさん楽しめる。そして1、2巻と続いたこの3巻目。冒頭の数話の「実話」っぷりは必見。



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